勘定科目「前払費用」に関する解説と仕分例

勘定科目の一つである「前払費用」(読み仮名:まえばらいひよう、分類:流動資産)に関する解説です。勘定科目に関する解説を行ったあと、勘定科目を使った仕訳例を使って実際の仕分の仕方を解説します。

前払費用とは

「前払費用」とは、企業が将来のサービスや商品提供を受ける前に、その代金を支払った場合に計上する資産のことです。これは、事前に支払った費用であり、まだ提供されていないサービスや商品に対して支払った金額を指します。前払費用は、貸借対照表上で「流動資産」として分類され、例えば、1年分の保険料や賃借料をまとめて支払った場合に利用されます。

会計上の観点から、前払費用は支払時点では費用として処理されず、支払った金額のうち未経過の分を資産として計上します。そして、サービスや商品の提供が進むにつれ、対応する分だけを費用に振り替えます。このようにすることで、特定の期間に費用が過剰に計上されることを避け、適切な期間にわたって費用が配分されます。たとえば、年度の初めに1年分の保険料を支払った場合、支払額は前払費用として記録され、各月ごとに1か月分の保険料が費用に振り替えられます。

前払費用はどのような時に使用されるのか

前払費用が使用されるのは、企業が事前に費用を支払う必要がある場合です。企業の支出にはさまざまな経費が含まれますが、特に保険料や賃借料、定期的な会員費やメンテナンス費用などが事前に支払われることが多く、それぞれの期間にわたって使用されます。前払費用として処理することにより、企業は支出を適切な期間に配分し、正確な利益を計算することができます。

例えば、企業が1年間の賃借契約を結び、1年分の賃借料を年度初めに支払ったとします。この支払いを全額一括で費用計上すると、支払った期に費用が偏り、財務諸表における利益が大きく減少してしまいます。このような場合、支払った金額を前払費用として資産に計上し、1か月ごとに12分の1ずつ賃借料に振り替えることで、会計上の収支を均等に配分することができます。

また、長期的な契約に基づく支出についても、前払費用として記録することが可能です。これにより、企業は支払った費用を適切な期間に費用として反映し、経営状況を正確に把握することができます。

前払費用の仕分例

「前払費用」を使った具体的な仕分例です。

1年分の保険料を前払いで支払った場合

年間の保険料として240,000円を一括で支払ったとき:

借方:前払費用 240,000円 / 貸方:現金 240,000円

(説明:支払った保険料を前払費用として資産に計上し、現金の減少を記録します)

毎月の前払費用の振替(保険料の1か月分を経費に計上)

年間の保険料240,000円のうち、1か月分20,000円を経費として認識するとき:

借方:保険料 20,000円 / 貸方:前払費用 20,000円

(説明:1か月分の保険料を経費として計上し、前払費用から減額します)

3か月分の賃借料を前払いで支払った場合

3か月分の賃借料300,000円を前払いで支払ったとき:

借方:前払費用 300,000円 / 貸方:現金 300,000円

(説明:賃借料の前払い分を資産として計上し、現金の減少を記録します)

毎月の前払費用の振替(賃借料の1か月分を経費に計上)

前払いした賃借料300,000円のうち、1か月分100,000円を経費に振り替えるとき:

借方:賃借料 100,000円 / 貸方:前払費用 100,000円

(説明:1か月分の賃借料を経費として計上し、前払費用を減額します)

会員費を前払いで支払った場合

1年分の会員費120,000円を前払いで支払ったとき:

借方:前払費用 120,000円 / 貸方:現金 120,000円

(説明:会員費を前払費用として資産に計上し、現金の減少を記録します)

毎月の前払費用の振替(会員費の1か月分を経費に計上)

会員費の前払い分120,000円のうち、1か月分10,000円を経費として計上するとき:

借方:会員費 10,000円 / 貸方:前払費用 10,000円

(説明:1か月分の会員費を経費に計上し、前払費用を減少させます)

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著者 / Tommy Ikura

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