勘定科目「のれん」に関する解説と仕分例
勘定科目の一つである「のれん」(読み仮名:のれん、分類:無形固定資産)に関する解説です。勘定科目に関する解説を行ったあと、勘定科目を使った仕訳例を使って実際の仕分の仕方を解説します。
のれんとは
「のれん」は、企業が他の企業を買収する際に、その企業の純資産(資産から負債を引いた額)を超えて支払った代金に相当する部分を指す勘定科目です。純資産額を上回る支払いの背景には、買収対象企業が持つブランド力、顧客基盤、従業員のスキルやノウハウ、独自の技術、取引先との信頼関係といった無形の資産価値が考慮されます。このように、「のれん」は純粋な資産額に現れない価値を認めることで発生し、貸借対照表上では無形固定資産として計上されます。
のれんは、通常、買収価格から純資産額を引いた差額として計算され、企業の買収後に会計処理されます。取得原価で計上されたのれんは、一定の期間にわたり償却され、費用として計上されます。日本の会計基準では、のれんの償却期間は、一般的に20年以内とされており、経営判断に応じて適切な償却期間が設定されます。また、のれんは毎期、減損処理が行われ、将来的に収益を生み出す価値が減少した場合、減損損失として一括で費用化されることもあります。
のれんはどのような時に使用されるのか
のれんは、以下のようなケースで使用されます。
- 企業買収や合併の際
企業が他社を買収、または合併する際に、その企業の純資産額を上回る金額を支払った場合に発生します。このとき、超過額がのれんとして無形資産に計上され、買収先のブランド価値や技術、顧客基盤が企業の資産価値として認識されます。 - ブランド力や顧客基盤の評価
特定のブランドや製品ラインの買収に伴い、そのブランドが持つ信用や顧客基盤がのれんとして計上される場合があります。これは、ブランドの持つ将来的な収益力を見越したものであり、企業がこれを無形資産として認識することで、財務上もその価値を反映できます。 - 技術力やノウハウの取得
独自技術を持つ企業の買収により、その技術やノウハウが将来の収益増加に寄与すると見込まれる場合にも、のれんが計上されます。これにより、単純な資産額には現れない無形の価値を財務上に反映させることができます。 - のれんの償却および減損処理
のれんは、毎期の償却や減損の対象となります。例えば、買収した企業の業績が想定より悪化した場合、そののれんの価値が減少したと判断されることがあります。この際、減損処理により一部または全額が費用化されます。
のれんは、企業買収や合併における無形の価値を表現する勘定科目であり、企業が長期的に収益を上げる見込みを見込んで支払う「プレミアム」にあたります。そのため、のれんの適切な評価や償却、減損処理が財務管理の重要な要素となります。
のれんの仕分例
「のれん」を使った具体的な仕分例です。
企業買収により純資産を上回る額としてのれんを計上した
企業買収により純資産を上回る額としてのれん500,000円を計上した場合:
借方:のれん 500,000円 / 貸方:現金 500,000円
(説明:企業買収に伴い、純資産を上回る額をのれんとして計上しました)
のれんの償却費として毎期計上した
のれんの償却費として毎期100,000円を計上した場合:
借方:のれん償却費 100,000円 / 貸方:のれん 100,000円
(説明:のれんの償却費を毎期計上しました)
買収した企業の業績悪化に伴い、のれんを減損処理した
買収した企業の業績悪化に伴い、のれん300,000円を減損処理した場合:
借方:減損損失 300,000円 / 貸方:のれん 300,000円
(説明:買収企業の業績悪化により、のれんの減損損失を計上しました)
企業合併により、のれんが計上された後、年間償却額を計上した
企業合併により、のれんが計上された後、償却期間5年で年間償却額100,000円を計上した場合:
借方:のれん償却費 100,000円 / 貸方:のれん 100,000円
(説明:のれんを5年で償却するため、毎年償却費を計上しました)
将来的にのれんの価値が減少し、全額を減損処理した
将来的にのれんの価値が減少し、全額600,000円を減損処理した場合:
借方:減損損失 600,000円 / 貸方:のれん 600,000円
(説明:のれんの価値が減少したため、減損処理を行い、全額を費用化しました)
買収完了時に、のれんを計上し、現金で支払った
買収完了時に、のれん700,000円を計上し、現金で支払った場合:
借方:のれん 700,000円 / 貸方:現金 700,000円
(説明:企業買収完了に伴い、のれんを計上しました)
著者 / Tommy Ikura
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