勘定科目「投資有価証券」に関する解説と仕分例
勘定科目の一つである「投資有価証券」(読み仮名:とうしゆうかしょうけん、分類:投資その他)に関する解説です。勘定科目に関する解説を行ったあと、勘定科目を使った仕訳例を使って実際の仕分の仕方を解説します。
投資有価証券とは
「投資有価証券」とは、企業が他の企業への投資や資産運用を目的として保有する株式や債券を指す勘定科目です。これには、株式、社債、国債、公社債、投資信託などが含まれ、通常は売買目的ではなく、長期間の保有を前提としたものが多いです。企業は、業務提携や資本関係の強化、利益の分配(配当や利息)を得る目的で投資有価証券を保有します。貸借対照表では、固定資産に分類され、企業が将来的な収益や資産の増加を見込んで投資していることを示します。
投資有価証券の取得原価には、購入価格のほかに仲介手数料、税金などの付随費用が含まれます。決算時には、保有する有価証券の時価を反映するため、時価評価を行う場合があります。この時、時価が取得原価を下回る場合には評価損を計上し、時価が上昇している場合は評価益として計上されることもあります。こうした評価替えを通じて、企業の資産価値が会計に適切に反映されるようにします。
投資有価証券はどのような時に使用されるのか
投資有価証券は、以下のようなケースで使用されます。
- 資産運用や投資収益の獲得を目的とする場合
企業は、余剰資金を資産運用するために株式や債券などの有価証券を購入し、投資収益を得ることを目指します。配当金や利息収入が期待でき、安定的な収益源として活用されます。 - 他企業との業務提携や関係強化のための投資
企業は業務提携や関係強化を図るため、他企業の株式を取得する場合があります。こうした投資により、取引先との関係を深め、戦略的な協力関係を築くことが可能です。 - 資産保全や長期的な財務安定化を図るための保有
投資有価証券は、企業の資産を保全し、長期的に財務の安定化を図る手段としても使用されます。特に低リスクの債券などは、リスクを抑えた運用に適しており、企業の安定資産として位置づけられます。 - 成長性のある分野や企業への投資
将来の成長が期待できる企業や分野に対して資金を投じることで、将来的な収益増加や資産価値の向上を図ることができます。こうした投資は、企業の中長期的な成長戦略の一環として行われます。
投資有価証券は、企業が余剰資金を有効に活用し、安定した収益を得る手段であると同時に、他企業との戦略的な関係を強化するためにも用いられます。また、株式や債券の評価損益を通じて企業の資産価値が適切に把握され、将来の経営に役立つ財務情報を提供します。
投資有価証券の仕分例
「投資有価証券」を使った具体的な仕分例です。
他社株式を長期保有目的で購入し、普通預金で支払った
他社株式を長期保有目的で1,000,000円で購入し、普通預金で支払った場合:
借方:投資有価証券 1,000,000円 / 貸方:普通預金 1,000,000円
(説明:他社株式を長期保有目的で購入し、投資有価証券として計上しました)
投資信託を購入し、代金を現金で支払った
投資信託を500,000円で購入し、代金を現金で支払った場合:
借方:投資有価証券 500,000円 / 貸方:現金 500,000円
(説明:資産運用のため、投資信託を購入し、投資有価証券として計上しました)
保有する株式の時価評価額が決算時に減少した場合、評価損を計上した
保有する株式の時価評価額が決算時に300,000円減少した場合、評価損を計上した場合:
借方:投資有価証券評価損 300,000円 / 貸方:投資有価証券 300,000円
(説明:保有する株式の時価評価に基づき評価損を計上しました)
社債を長期保有目的で購入し、手数料を現金で支払った
社債を長期保有目的で200,000円で購入し、手数料5,000円を現金で支払った場合:
借方:投資有価証券 205,000円 / 貸方:現金 205,000円
(説明:社債を長期保有目的で購入し、手数料を含めて投資有価証券として計上しました)
保有していた他社株式を売却し、売却益を計上した
保有していた他社株式を1,200,000円で売却し、売却益100,000円を計上した場合:
借方:現金 1,200,000円 / 貸方:投資有価証券 1,100,000円 貸方:有価証券売却益 100,000円
(説明:保有していた他社株式を売却し、売却益を計上しました)
保有する社債の利息収入を受け取り、現金で計上した
保有する社債の利息収入として15,000円を受け取り、現金で計上した場合:
借方:現金 15,000円 / 貸方:受取利息 15,000円
(説明:保有する社債の利息収入を受け取りました)
著者 / Tommy Ikura
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