勘定科目「貸倒損失」に関する解説と仕分例
勘定科目の一つである「貸倒損失」(読み仮名:かしだおれそんしつ、分類:販管費)に関する解説です。勘定科目に関する解説を行ったあと、勘定科目を使った仕訳例を使って実際の仕分の仕方を解説します。
貸倒損失とは
「貸倒損失」は、企業が保有する債権(売掛金や受取手形など)の一部または全部が回収不能になり、事実上失われた場合に計上される損失です。貸倒損失は、取引先の倒産や経営状況の悪化などによって債権が回収できなくなった場合に発生し、企業の費用として損益計算書に計上されます。この損失は、企業の財務状況に大きな影響を及ぼすため、適切な管理と事前の引当金計上が重要となります。
企業は債権が貸倒れるリスクに備え、通常、期末に貸倒引当金を計上しますが、実際に貸倒れが発生した際には貸倒損失として計上し、貸倒引当金がある場合はその金額を取り崩して損失を補填します。貸倒損失は、営業外費用として計上されるため、営業利益には影響を与えませんが、経常利益に影響を及ぼすため、最終的な純利益の減少につながります。
貸倒損失に含まれる要因
- 取引先の倒産:取引先が倒産した場合、売掛金や受取手形などの回収が不可能になります。
- 長期間の回収不能:取引先が長期間にわたり債務を支払わない場合、回収不能と判断されることがあります。
- 訴訟や和解による債権放棄:取引先との訴訟や交渉の結果、債権の一部または全部を放棄することになる場合があります。
貸倒損失はどのような時に使用されるのか
貸倒損失は、以下のようなケースで使用されます。
- 取引先の破産による貸倒れ
取引先が倒産し、売掛金や手形などの債権が回収できなくなった場合には、貸倒損失を計上します。これは債権の全額が回収不能と判断されるため、即時に費用化されます。 - 売掛金や受取手形の長期未回収
債権の回収期限を大幅に過ぎており、取引先と連絡が取れないなど、債権の回収可能性が低いと判断された場合に、貸倒損失を計上します。 - 訴訟や和解による債権放棄
取引先との紛争や訴訟が発生し、その結果、債権を放棄せざるを得ない場合にも、貸倒損失として費用計上されます。和解や交渉により一部の債権が回収不能になった際も同様です。 - 貸倒引当金で補填する場合としない場合
貸倒損失が発生した際に、既に計上されている貸倒引当金があれば、その金額を取り崩して補填します。貸倒引当金がない場合は、直接貸倒損失を費用として計上します。
貸倒損失の仕分例
「貸倒損失」を使った具体的な仕分例です。
取引先の倒産により、売掛金が回収不能となり、貸倒損失として計上する
取引先の倒産により、売掛金100,000円が回収不能となり、貸倒損失として計上する場合:
借方:貸倒損失 100,000円 / 貸方:売掛金 100,000円
(説明:取引先倒産により売掛金が回収不能となったため、貸倒損失を計上しました)
受取手形が取引先の経営破綻により回収不能となり、貸倒引当金を充当して処理する
受取手形200,000円が取引先の経営破綻により回収不能となり、貸倒引当金150,000円を充当して処理する場合:
借方:貸倒引当金 150,000円 / 貸方:受取手形 200,000円 借方:貸倒損失 50,000円
(説明:貸倒引当金を取り崩して一部を補填し、残りを貸倒損失として計上しました)
長期間未回収の売掛金を貸倒損失として計上する
長期間未回収の売掛金50,000円を貸倒損失として計上する場合:
借方:貸倒損失 50,000円 / 貸方:売掛金 50,000円
(説明:長期間未回収の売掛金を貸倒損失として計上しました)
取引先と和解し、売掛金の一部を放棄することになった
取引先と和解し、売掛金70,000円のうち30,000円を放棄することになった場合:
借方:貸倒損失 30,000円 / 貸方:売掛金 30,000円
(説明:取引先との和解により一部債権を放棄し、貸倒損失を計上しました)
訴訟により受取手形の一部が回収不能と確定し、貸倒引当金を用いずに貸倒損失として計上する
訴訟により受取手形120,000円のうち60,000円が回収不能と確定し、貸倒引当金を用いずに貸倒損失として計上する場合:
借方:貸倒損失 60,000円 / 貸方:受取手形 60,000円
(説明:訴訟により受取手形の一部が回収不能となり、貸倒損失を計上しました)
経営破綻した取引先の売掛金に対し、貸倒引当金を充当し、残りを貸倒損失として計上する
経営破綻した取引先の売掛金150,000円に対し、貸倒引当金100,000円を充当し、残り50,000円を貸倒損失として計上する場合:
借方:貸倒引当金 100,000円 / 貸方:売掛金 150,000円 借方:貸倒損失 50,000円
(説明:取引先の破綻により、売掛金の一部を貸倒引当金で補填し、残りを貸倒損失として計上しました)
著者 / Tommy Ikura
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