勘定科目「事業主借」に関する解説と仕分例
勘定科目の一つである「事業主借」(読み仮名:じぎょうぬしかり、分類:事業主借)に関する解説です。勘定科目に関する解説を行ったあと、勘定科目を使った仕訳例を使って実際の仕分の仕方を解説します。
事業主借とは
「事業主借」は、個人事業主が私的な資金や物品を事業に投入した場合に使用する勘定科目です。個人事業主の事業活動においては、事業用の資金や資産と私的な資金や資産が同一の財務基盤上にありますが、事業と個人の取引を区別して管理する必要があります。そこで、個人の資金を事業に投入する場合に「事業主借」を用いて処理することで、事業の純資産として明確に管理することが可能です。
「事業主借」は貸借対照表の負債の部に計上されますが、これは法人の「資本金」と似た概念です。ただし、個人事業主の資金投入が資本金として扱われることはないため、あくまで「事業主借」という科目で管理されます。この勘定科目を使用することにより、個人資金の投入と事業用の資金の流れが区別され、会計処理が整理されます。なお、逆のケースとして、事業用資金を個人用途に利用した場合には「事業主貸」が使われます。
事業主借はどのような時に使用されるのか
事業主借が使用されるのは、主に以下のような状況です。
- 事業に個人資金を投入した場合
事業の運転資金が不足した際に、事業主が私的な貯金から資金を事業用口座に投入することがあります。このような場合、事業に対して私的な資金を貸し付けた形になるため「事業主借」を使って記録します。 - 個人の資金で事業に必要な設備や備品を購入した場合
事業用として使う備品や設備を、事業主が個人的な資金から支払って購入した場合にも、事業主借として処理し、事業の経費として計上します。 - 事業に私的資金を一時的に充てた場合
たとえば、事業用の支払いが急遽必要になり、私的な資金を用いた場合、後日事業資金から返済するまでの間「事業主借」として処理します。 - 個人資金を使って事業用の家賃や光熱費を支払った場合
事業用の家賃や光熱費などを、事業主が個人的に負担した場合には、事業主借として記録します。これにより、事業に関わる支出が正確に反映されます。
事業主借の仕分例
「事業主借」を使った具体的な仕分例です。
事業主が個人の預金を事業用口座に振り替えた
事業主が個人の預金から50,000円を事業用口座に振り替えた場合:
借方:普通預金 50,000円 / 貸方:事業主借 50,000円
(説明:事業用資金不足により個人の預金から事業用口座に振り替えました)
事業に必要な備品を個人資金で購入した
事業に必要な備品10,000円を個人資金で購入した場合:
借方:消耗品費 10,000円 / 貸方:事業主借 10,000円
(説明:事業用の備品を個人資金で購入しました)
事業主が私的資金で事業の家賃を支払った
事業主が私的資金で事業の家賃30,000円を支払った場合:
借方:地代家賃 30,000円 / 貸方:事業主借 30,000円
(説明:事業用家賃を個人資金で支払いました)
事業の光熱費を事業主が私的資金から支払った
事業の光熱費15,000円を事業主が私的資金から支払った場合:
借方:水道光熱費 15,000円 / 貸方:事業主借 15,000円
(説明:事業の光熱費を個人資金で支払いました)
事業主が個人のクレジットカードで事業用の設備費を支払った
事業主が個人のクレジットカードで事業用の設備費100,000円を支払った場合:
借方:設備費 100,000円 / 貸方:事業主借 100,000円
(説明:事業用設備を個人クレジットカードで購入しました)
事業主が個人の現金から従業員への給料を支払った
事業主が個人の現金から従業員への給料20,000円を支払った場合:
借方:給与手当 20,000円 / 貸方:事業主借 20,000円
(説明:従業員への給料を個人資金で支払いました)
個人の預金から事業用車両の修理費を支払った
個人の預金から事業用車両の修理費5,000円を支払った場合:
借方:車両費 5,000円 / 貸方:事業主借 5,000円
(説明:事業用車両の修理費を個人の預金で支払いました)
著者 / Tommy Ikura
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