勘定科目「繰延税金負債」に関する解説と仕分例

勘定科目の一つである「繰延税金負債」(読み仮名:くりのべぜいきんふさい、分類:流動負債)に関する解説です。勘定科目に関する解説を行ったあと、勘定科目を使った仕訳例を使って実際の仕分の仕方を解説します。

繰延税金負債とは

「繰延税金負債」とは、会計上で発生する一時的な税効果の調整を行うために計上される負債勘定です。具体的には、税効果会計に基づき、会計上の利益と税務上の所得が異なるタイミングで認識される際に、将来発生する可能性のある法人税負担を見越して計上されます。繰延税金負債は、会計上で認識した収益や費用が、税務上の課税タイミングと異なる場合に生じ、将来にわたってその差額が解消することを前提としています。

たとえば、減価償却費の計上において、会計上は定額法を用いる一方で、税務上は定率法を用いる場合があります。この場合、初期の償却費が税務上では会計上よりも大きくなり、課税所得が少なくなりますが、将来的には税務上の償却費が会計上よりも少なくなり、課税所得が大きくなるため、将来の税負担が増加する見込みが生じます。この増加分を繰延税金負債として計上し、税務上の負担の平準化を図ることができます。

繰延税金負債はどのような時に使用されるのか

繰延税金負債が使用されるのは、主に以下のような状況です。

繰延税金負債は、企業の財務諸表において会計基準と税務基準のズレを調整し、税効果の影響を適切に反映させるために重要な役割を果たします。税効果会計の活用により、企業の実際の税負担が正確に反映され、財務状況の健全性が保たれます。

繰延税金負債の仕分例

「繰延税金負債」を使った具体的な仕分例です。

減価償却費の税務計算方法の差異により繰延税金負債を計上する

減価償却費の税務計算方法の差異により、10,000円の繰延税金負債を計上する場合:

借方:法人税等調整額 10,000円 / 貸方:繰延税金負債 10,000円

(説明:税務上の減価償却差異により、将来の税負担を見越して繰延税金負債を計上しました)

保有有価証券の評価益に対する将来の税負担を見越し、繰延税金負債に計上する

保有有価証券の評価益に対する将来の税負担を見越し、15,000円を繰延税金負債に計上する場合:

借方:評価益 15,000円 / 貸方:繰延税金負債 15,000円

(説明:有価証券の評価益に対する将来の税負担を反映し、繰延税金負債を計上しました)

退職給付引当金が会計上認識されたが、税務上は課税対象外のため繰延税金負債として計上する

退職給付引当金が会計上認識されたが、税務上は課税対象外のため、8,000円を繰延税金負債として計上する場合:

借方:退職給付費用 8,000円 / 貸方:繰延税金負債 8,000円

(説明:退職給付引当金の税効果による将来負債を見越して、繰延税金負債を計上しました)

貸倒引当金が税務上未認可であるため、将来の税負担に備えて繰延税金負債に計上する

貸倒引当金が税務上未認可であるため、将来の税負担に備えて12,000円を繰延税金負債に計上する場合:

借方:貸倒引当金繰入額 12,000円 / 貸方:繰延税金負債 12,000円

(説明:貸倒引当金の税務未認可分に対して将来の税負担に備え、繰延税金負債を計上しました)

土地の評価益に対して課税差額を見越し、繰延税金負債を計上するx

土地の評価益に対して課税差額を見越し、20,000円の繰延税金負債を計上する場合:

借方:土地評価益 20,000円 / 貸方:繰延税金負債 20,000円

(説明:土地評価益に関連する将来の税負担を反映して、繰延税金負債を計上しました)

将来の税務調整による負担増加を見込み、差額として繰延税金負債を追加計上する

将来の税務調整による負担増加を見込み、差額として5,000円の繰延税金負債を追加計上する場合:

借方:法人税等調整額 5,000円 / 貸方:繰延税金負債 5,000円

(説明:将来の税務調整に備えて、繰延税金負債を追加計上しました)

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著者 / Tommy Ikura

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