勘定科目「繰越利益剰余金」に関する解説と仕分例
勘定科目の一つである「繰越利益剰余金」(読み仮名:くりこしりえきじょうよきん、分類:株主資本)に関する解説です。勘定科目に関する解説を行ったあと、勘定科目を使った仕訳例を使って実際の仕分の仕方を解説します。
繰越利益剰余金とは
「繰越利益剰余金」とは、企業がこれまでに獲得した利益のうち、配当や役員賞与、その他の目的に使われず、翌期に繰り越された部分を指す勘定科目です。繰越利益剰余金は貸借対照表の純資産の部に記載され、企業が内部で保有する利益の蓄積を示します。通常、繰越利益剰余金は、会社が稼いだ利益から支出や税金、配当などを差し引いた後に残るもので、企業の自己資本を構成する重要な項目のひとつです。
繰越利益剰余金の増減は、企業の業績や配当政策に依存します。例えば、黒字決算が続く企業では繰越利益剰余金が増加し、純資産が厚くなります。一方、赤字が続くと、利益剰余金が減少し、最悪の場合、累積赤字に転じることもあります。利益剰余金は企業の財務健全性や将来の投資能力に影響を与えるため、企業の成長戦略において重要な役割を果たします。
繰越利益剰余金はどのような時に使用されるのか
繰越利益剰余金は、企業が内部で保有する利益の蓄積を表し、以下のようなケースで使用されることがあります。
- 配当金の支払い
繰越利益剰余金は、株主への配当金の支払原資として利用されることがあります。企業が配当を行う際には、配当金額を繰越利益剰余金から引き出し、利益剰余金の一部が株主に還元されます。これにより、株主に対する利益配分が実現します。 - 自己株式の取得
企業が自社の株式を市場から買い戻す(自己株式の取得)場合も、繰越利益剰余金が使用されることがあります。これにより発行済株式数が減少し、一株あたりの価値向上を目指すことが可能です。 - 社内での設備投資や成長投資
繰越利益剰余金は、社内での新規設備投資や成長のための投資資金としても利用されます。例えば、新規プロジェクトの資金調達や研究開発費用、または事業拡大のための投資に充てられることがあります。 - 将来の経営危機に備えた内部留保
企業は、将来の景気変動や経済危機などに備えて、繰越利益剰余金を内部留保として確保しておくことが一般的です。これにより、予期しない経済的な困難が発生した場合でも、財務の安定性を維持することができます。 - 役員賞与や従業員への特別手当
繰越利益剰余金は、役員や従業員に対する特別手当や報奨金の支払いにも利用されることがあります。これは業績が良好な場合に行われ、従業員のモチベーション向上や役員への報酬として機能します。
繰越利益剰余金は、企業の財務上の柔軟性を高め、成長戦略や株主還元を支える原資となります。このため、繰越利益剰余金の管理は企業の将来の成長と財務健全性の維持に重要です。
「繰越利益剰余金」科目の仕分けサンプル
「繰越利益剰余金」を使った具体的な仕分例です。
配当金を支払う場合
配当金50,000円を支払う場合:
借方:繰越利益剰余金 50,000円 / 貸方:未払配当金 50,000円
(説明:繰越利益剰余金から配当金を支払い、未払配当金を計上しました)
自己株式を取得する場合
自己株式100,000円分を取得する場合:
借方:自己株式 100,000円 / 貸方:繰越利益剰余金 100,000円
(説明:繰越利益剰余金を用いて自己株式を取得しました)
役員賞与を支払う場合
役員賞与として20,000円を支払う場合:
借方:役員賞与 20,000円 / 貸方:繰越利益剰余金 20,000円
(説明:役員に対する賞与を繰越利益剰余金から支払いました)
設備投資のために繰越利益剰余金を充当する場合
設備投資のために繰越利益剰余金150,000円を充当する場合:
借方:建物 150,000円 / 貸方:繰越利益剰余金 150,000円
(説明:繰越利益剰余金を使用し、設備投資を行いました)
特別手当として繰越利益剰余金を従業員に支給する場合
特別手当として従業員に支給するため、30,000円を充当する場合:
借方:特別手当 30,000円 / 貸方:繰越利益剰余金 30,000円
(説明:業績に応じた特別手当を繰越利益剰余金から支払いました)
会社の新規プロジェクトに対する投資として繰越利益剰余金を使用する場合
会社の新規プロジェクトに対する投資として繰越利益剰余金を200,000円使用する場合:
借方:プロジェクト投資 200,000円 / 貸方:繰越利益剰余金 200,000円
(説明:新規プロジェクトの資金として繰越利益剰余金を利用しました)
著者 / Tommy Ikura
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