勘定科目「利益準備金」に関する解説と仕分例
勘定科目の一つである「利益準備金」(読み仮名:りえきじゅんびきん、分類:株主資本)に関する解説です。勘定科目に関する解説を行ったあと、勘定科目を使った仕訳例を使って実際の仕分の仕方を解説します。
利益準備金とは
「利益準備金」とは、会社が株主に対する配当を行う際、会社法の規定に基づいて計上する積立金の一つであり、法定準備金に含まれる項目です。利益準備金は、企業の内部留保として会社の財務基盤を強化するために積み立てられ、将来の不測の事態に備える目的で設けられています。このため、利益準備金は貸借対照表の純資産の部に計上され、会社の自己資本の一部として扱われます。
会社法に基づき、企業が配当を行う際には、純資産が一定基準を満たしていない場合に利益準備金を積み立てる義務があります。具体的には、会社が株主に配当を行う場合、配当金額の1/10を利益準備金として積み立て、資本金と利益準備金の合計額が資本の1/4に達するまで積み立てる必要があります。これにより、利益準備金は企業の財務の健全性や資本の充実を図るための基本的な積立金として機能し、会社が安定的に経営を続けるための基盤を強化します。
利益準備金はどのような時に使用されるのか
利益準備金が使用される場面は限られていますが、以下のようなケースで役立ちます。
- 財務基盤の強化
利益準備金は、企業の内部留保として積み立てられることで、財務の安定性を向上させます。これにより、企業は将来的な事業リスクや不況への備えを確保し、長期的な成長を支えることが可能となります。 - 会社の存続と信用力の維持
利益準備金がしっかりと積み立てられている企業は、財務基盤が強固であると評価されることが多く、取引先や金融機関からの信用力が向上します。これにより、融資や新規取引がスムーズに進み、経営の安定が図れます。 - 債権者保護
利益準備金は、企業の資本の一部として計上されるため、会社が万が一破綻した場合でも、利益準備金の存在が債権者に対する一定の保護措置として機能します。これにより、企業が解散する際にも債権者の利益をある程度守る役割を果たします。 - 法定準備金の補充
利益準備金は、資本の1/4に達するまで積み立てられる必要があるため、企業は配当実施の際にこの積立基準を満たすように利益準備金を活用します。これにより、会社法の規定に準じた健全な財務管理が行われます。
利益準備金は、特定の目的で使用されるのではなく、企業の財務基盤の強化や安定的な経営のために積み立てられる内部留保です。財務上の備えとしての役割が中心であり、日常的な業務には直接使用されませんが、長期的な企業価値の向上に重要な役割を果たします。
利益準備金の仕分例
「利益準備金」を使った具体的な仕分例です。
配当金を支払う際に利益準備金を積み立てる場合
配当金100,000円を支払う際に利益準備金10,000円を積み立てる場合:
借方:繰越利益剰余金 10,000円 / 貸方:利益準備金 10,000円
(説明:会社法の規定に基づき、配当金の1/10を利益準備金として積み立てました)
資本準備金を利益準備金に振り替える場合
資本準備金を利益準備金に振り替える場合(20,000円):
借方:資本準備金 20,000円 / 貸方:利益準備金 20,000円
(説明:資本準備金の一部を利益準備金に振り替えました)
配当金を支払う際に、利益準備金を積み立てる場合
配当金50,000円を支払う際に、利益準備金5,000円を積み立てる場合:
借方:繰越利益剰余金 5,000円 / 貸方:利益準備金 5,000円
(説明:配当金支払いに伴い、利益準備金を積み立てました)
資本金と利益準備金の合計が資本の1/4に達するまで利益準備金を追加で10,000円積み立てる場合
資本金と利益準備金の合計が資本の1/4に達するまで利益準備金を追加で10,000円積み立てる場合:
借方:繰越利益剰余金 10,000円 / 貸方:利益準備金 10,000円
(説明:会社法の規定に従い、利益準備金を積み立てました)
決算時において、利益準備金が不足しているため、追加で積み立てる場合
決算時において、利益準備金が不足しているため、追加で30,000円を積み立てる場合:
借方:繰越利益剰余金 30,000円 / 貸方:利益準備金 30,000円
(説明:決算時に利益準備金が不足しているため、追加で積み立てました)
利益準備金を使用して法定準備金に振り替える場合
利益準備金を使用して法定準備金に振り替える場合:
借方:利益準備金 15,000円 / 貸方:法定準備金 15,000円
(説明:利益準備金を法定準備金に振り替えました)
著者 / Tommy Ikura
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